恐怖

ちょっとした緊急事態宣言が出された朝

 

職場を目の前に、母から電話が入る。

 

父がちゃんと病院に行ったらしい。

「肺ガンだって」

2年で2回に渡る入院で、

母も免疫ができたのだろう。

その声から悲痛な響きはなくなっていた。

まずは確定、

その検査のために明日病院へ行くらしい。

考える間もなく、

「じゃあ食事する?」

と伝えた。

 

「結果出たら、また幼稚園児に戻るし

検査なら食事してないからお腹空くでしょ?」

 

なるほど、と電話越しでも

母が納得するのがわかった。

まあ、父は拒否るだろうけど

そう思いつつ、父への確認を求めると

「今寝てる」

夜でなく朝に寝る習慣は継続してるようだ。

 

仕事もあるので、父の意思はLINEにと切った。

 

肺ガン、まあ、

タバコ辞められなかったから当然だろう。

 

手術も受けられるかわからないらしい。

昨年、麻酔に耐えられる状態になるまで

入院してた身だ。

退院はしたが、今年は食事も細く、

歩くことすらろくに出来ていないようなのに

今すぐ手術できる状態なわけがない。

 

全ては予想の範疇。

あとは、どれだけ父がふて腐れるか。

 

予想通り、父の返答は

「食事はいい」

だった。

会いに行くのはいいのだろうか?

未だに迷っているが、

疲れているだろう母を思い、

母と食事に行くことにした。

 

そして、同時に頼まれたものを

兄に頼んでみた。

若干の迷いはあったが、

聞くだけ聞こうとメールした。

急遽にも関わらず、兄は快く対応してくれた。

しかも、お願いした以上を用意してくれた。

 

そして、兄との待ち合わせ場所で

久々のメンバーの顔を見た。

昼間はみんなで湯河原に行っていたらしい。

良いことだ。

 

仕事が長引いたことの疲れもなくなり、

お腹もいっばまいになって帰宅。

これまた懐かしい人からLINEが来た。

 

兄も父も、

私にとって過去の人になりつつある。

感謝は、してる。

でも、現実の私に必要不可欠な人ではなくなっている。

 

 

父が長くないだろう恐怖。

それは、父がいなくなることではなく

家族が揃うことの恐怖。

お葬式という、故人を忍ぶべき場に

私は物凄い恐怖を抱いている。

家族が揃うことほどの恐怖は、私にはない。

怖ろしい。

顔も目も合わせず、会話もせずに済むことを

ただひたすらに願っている。

自分が病まずに済みますように。

来るべき日に向け、覚悟を決めて行こう